ナビゲーションブックは、障害のある方が自分の特性や苦手なこと、必要な配慮、働くうえで工夫していることを整理し、支援者や職場に伝えるための情報共有ツールです。
就職活動や職場実習、就職後の定着支援の場面で活用されることがあり、自分のことをうまく説明するのが苦手な方にとって、心強いサポートになります。
この記事でわかること
- ナビゲーションブックとは何か
- 就労パスポートとの違い
- ナビゲーションブックに書く内容
- 作成するときの流れ
- 就労移行支援で相談できること
ナビゲーションブックとは
ナビゲーションブックとは、働くうえでの自分の特徴や配慮してほしいことをまとめた資料です。
たとえば、次のような内容を整理します。
- 得意な作業
- 苦手な作業
- 疲れやすい場面
- 集中しやすい環境
- 指示を受けるときの希望
- 体調が崩れやすいサイン
- 職場にお願いしたい配慮
障害名だけでは、実際にどのような配慮が必要なのかは伝わりにくいものです。ナビゲーションブックを作ることで、「自分は何が苦手で、どうすれば働きやすくなるのか」を具体的に伝えやすくなります。
ナビゲーションブックを作る目的
ナビゲーションブックの目的は、自分の特性を整理し、働く場面で必要な配慮を伝えやすくすることです。
特に、発達障害、精神障害、高次脳機能障害などがある方は、困りごとが外から見えにくい場合があります。そのため、本人がどのような場面で困りやすいのか、どのような対応があると働きやすいのかを、あらかじめ整理しておくことが大切です。
ナビゲーションブックは、単なる自己紹介ではありません。就職活動、職場実習、面接、就職後の定着支援などで、本人・支援者・企業が共通理解を持つための資料として活用できます。
ナビゲーションブックと就労パスポートの違い
ナビゲーションブックと似たものに「就労パスポート」があります。どちらも、自分の特徴や配慮事項を整理するためのツールですが、使い方や位置づけには少し違いがあります。
| 項目 | ナビゲーションブック | 就労パスポート |
|---|---|---|
| 主な目的 | 自分の特性や配慮事項を詳しく整理する | 就職・職場定着に向けて情報共有する |
| 特徴 | 自由度が高く、本人の状況に合わせて作りやすい | 様式があり、項目に沿って整理しやすい |
| 向いている人 | 自分の困りごとや配慮事項を詳しく伝えたい人 | まずは決まった項目に沿って整理したい人 |
| 作成方法 | 本人と支援者が相談しながら作成することが多い | 厚生労働省の様式を使って作成できる |
どちらが正解というものではありません。詳しく整理したい場合はナビゲーションブック、まず項目に沿ってまとめたい場合は就労パスポート、という使い分けもできます。
ナビゲーションブックに書く内容の例
ナビゲーションブックには、主に次のような内容を書きます。
1. 自分の基本情報
氏名、連絡先、支援機関、緊急時の連絡先などを記入します。必要以上に個人情報を書く必要はありませんが、職場や支援者と共有するうえで必要な情報を整理します。
2. 得意なこと・強み
集中して取り組める作業、正確にできる作業、得意なコミュニケーション方法などを書きます。
例:
- 決まった手順の作業は正確に進めやすい
- 文章で指示をもらうと理解しやすい
- 静かな環境では集中して作業できる
3. 苦手なこと・困りやすい場面
苦手なことを書くのは、マイナス評価のためではありません。必要な工夫や配慮を考えるために整理します。
例:
- 口頭だけの指示だと忘れてしまうことがある
- 急な予定変更があると混乱しやすい
- 周囲の音が大きいと集中しにくい
4. 必要な配慮
職場にお願いしたい配慮を具体的に書きます。
例:
- 作業手順をメモやマニュアルで確認できるようにしたい
- 指示は一度にまとめず、優先順位をつけて伝えてほしい
- 体調が悪いときは短時間の休憩を相談したい
5. 体調管理・ストレスサイン
体調が崩れる前のサインや、調子を戻すための方法も書いておくと役立ちます。
例:
- 睡眠時間が短くなると集中力が落ちやすい
- ミスが増えたときは疲れがたまっていることが多い
- 短い休憩や静かな場所で気持ちを整えやすい
ナビゲーションブックの作り方
ナビゲーションブックは、いきなり完成形を作る必要はありません。少しずつ書き出し、支援者と一緒に整理していくのがおすすめです。
STEP1:これまでの困りごとを書き出す
まずは、学校、職場、アルバイト、生活場面などで困ったことを書き出します。
- どんな場面で困ったか
- そのとき何が起きたか
- どうすれば少し楽になったか
最初からきれいにまとめる必要はありません。思いついたことを箇条書きで出すだけでも十分です。
STEP2:得意なこと・うまくいった場面を整理する
困りごとだけでなく、うまくいった経験も大切です。
- 集中できた作業
- 安心して働けた環境
- わかりやすかった指示の出され方
うまくいった場面を整理すると、自分に合う働き方が見えやすくなります。
STEP3:必要な配慮を具体的にする
「配慮してほしい」とだけ書くよりも、具体的に書いた方が職場に伝わりやすくなります。
たとえば、「口頭指示が苦手」だけではなく、「口頭指示に加えて、メモやチャットでも確認できると助かります」と書くと、職場側も対応しやすくなります。
ひとりで作るのが難しい場合
ナビゲーションブックや就労パスポートは、自分ひとりで作るのが難しいこともあります。就労移行支援では、スタッフと相談しながら自己理解を深めたり、配慮事項を整理したりできます。
STEP4:支援者と一緒に見直す
自分では当たり前だと思っていることでも、第三者から見ると大切な特性である場合があります。
就労移行支援、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、相談支援事業所などの支援者と一緒に確認すると、より伝わりやすい内容に整理できます。
STEP5:実習や就職活動で使いながら更新する
ナビゲーションブックは、一度作ったら終わりではありません。職場実習や面接、就職後の経験を通じて、新しく気づいたことを追加していきます。
働く環境や体調によって、必要な配慮が変わることもあります。定期的に見直すことで、より実用的な資料になります。
ナビゲーションブックを使うタイミング
ナビゲーションブックは、次のような場面で活用できます。
- 就労移行支援で自己理解を深めるとき
- 職場実習前に支援者と情報共有するとき
- 面接で配慮事項を伝えるとき
- 就職後に職場の担当者と相談するとき
- 体調や働き方を見直すとき
特に、面接や実習では緊張して自分のことをうまく説明できないことがあります。あらかじめナビゲーションブックにまとめておくと、伝え忘れを防ぎやすくなります。
ナビゲーションブックを作るメリット
自分の特性を整理できる
ナビゲーションブックを作る過程で、自分の得意なこと、苦手なこと、必要な配慮が見えやすくなります。
支援者と情報共有しやすくなる
支援者に自分の状況を伝えるとき、毎回一から説明するのは大変です。ナビゲーションブックがあると、情報共有がスムーズになります。
職場に配慮事項を伝えやすくなる
配慮事項を具体的に書いておくことで、職場側も対応を考えやすくなります。
就職後の定着につながりやすい
就職後に困りごとが出た場合も、ナビゲーションブックをもとに相談しやすくなります。早めに相談できることで、職場定着につながる可能性があります。
ナビゲーションブックを作るときの注意点
ナビゲーションブックは便利なツールですが、作るときにはいくつか注意点があります。
すべてを職場に見せる必要はない
ナビゲーションブックに書いた内容を、すべて職場に共有する必要はありません。共有する相手や目的に応じて、見せる範囲を決めることが大切です。
苦手なことだけを書かない
苦手なことばかりを書くと、自分の強みが伝わりにくくなります。得意なこと、工夫していること、働く意欲も一緒に書くようにしましょう。
抽象的な表現を避ける
「配慮してほしい」「理解してほしい」だけでは、職場側が何をすればよいか分かりにくくなります。
「指示はメモでも確認できると助かります」「予定変更がある場合は、早めに教えてもらえると安心です」のように、具体的に書くことが大切です。
作成が難しいときは就労移行支援に相談できる
ナビゲーションブックは、自分ひとりで作ろうとすると難しく感じることがあります。
特に、自分の特性を言葉にすることや、職場に伝わりやすい表現に直すことは、ひとりでは悩みやすい部分です。
就労移行支援では、スタッフと一緒に自己理解を深めながら、就職活動に必要な書類や配慮事項を整理できます。ナビゲーションブックや就労パスポートの作成を相談できる事業所もあります。
よくある質問
ナビゲーションブックは必ず作らないといけませんか?
必ず作らなければいけないものではありません。ただ、自分の特性や配慮事項を整理したい方、就職活動や職場実習で伝え方に不安がある方には役立ちます。
ナビゲーションブックは誰に見せるものですか?
支援者、職場実習先、面接先、就職後の職場担当者などに共有することがあります。ただし、どこまで見せるかは本人が決めることが大切です。
就労パスポートと両方作った方がいいですか?
必ず両方作る必要はありません。就労パスポートは様式に沿って整理しやすく、ナビゲーションブックはより自由に詳しく書きやすい特徴があります。支援者と相談しながら、自分に合う方法を選びましょう。
診断名を書かなければいけませんか?
診断名を書くかどうかは、共有する目的や相手によって判断します。診断名よりも、「働くうえでどのような困りごとがあり、どのような配慮があると働きやすいか」を具体的に書くことが大切です。
就労移行支援で作成を手伝ってもらえますか?
事業所によって対応は異なりますが、自己理解や配慮事項の整理、就職活動書類の作成をサポートしている就労移行支援は多くあります。見学や相談の際に確認してみるとよいでしょう。
まとめ
ナビゲーションブックは、障害のある方が自分の特性や必要な配慮を整理し、支援者や職場に伝えやすくするためのツールです。
就労パスポートと似ていますが、ナビゲーションブックはより自由に、自分の状況に合わせて詳しくまとめやすい特徴があります。
大切なのは、完璧な資料を作ることではありません。自分が働きやすくなるために、得意なこと、苦手なこと、必要な配慮を少しずつ整理していくことです。
ひとりで作るのが難しい場合は、就労移行支援や支援機関に相談しながら進めると安心です。
この記事のポイント
- ナビゲーションブックは、自分の特性や配慮事項を整理するための資料
- 就労パスポートは、様式に沿って就職・職場定着に必要な情報をまとめやすい
- どちらも支援者と一緒に作ると、より伝わりやすくなる
- 就労移行支援では、自己理解や配慮事項の整理を相談できる





